それでも音楽を信じたミュージシャンの手記 「Note」感想

 錦戸亮の2ndアルバム、『Note』。聴いてください。言いたいことはこれです。とりあえず聴いて!一回!一回だけでいいから!
 少しでも錦戸亮を知る人、そして音楽好きならば必ず聞いてほしい一作です。
 世間的には恐らく俳優の面しかよく知られていない彼ですが、実は物凄い才能を持っていることをこのアルバムが証明しています。作詞作曲プロデュースのすべてをこなした今作(もちろん前作も!)。聴いてて飽きさせない。アルバムということを活かし、全12曲(通常版は13曲)が意味のある構成となっています。多岐に渡るジャンルを使いこなし、すべてが主役のように輝きながら練られた曲順でメリハリがあり、大胆なのに繊細。これが独立して二作目なのは本当に恐ろしいです。とにかく聴いてほしい。
 こんな状況でアルバムを出す事実自体が彼の音楽に対する挑戦と真摯さを思わせますが、説教や啓発めいた言葉はなく、錦戸亮らしく、ナチュラルで自然体、強くて優しいエッセンスが全てに入っています。
 サウンド自体はシンプルで電子音の打ち込みみたいなものは少ないですが、だからこその迫力と、生音へのリスペクトもあります。
 錦戸亮のファンではありますが、音楽好きでもあるので贔屓目は入っているけど入っていません。本当に素晴らしいアルバムです。
 今の情勢を思わせるような曲はあえて少なく、いつも通りの日常や何気ない瞬間にフォーカスをあてて大切なシーンとして切り取られたさまざまなジャンルの曲たちが、Noteというキーワード、香水の移り香にならってたくさんの表情を魅せてくれます。
 なんでもない些細な感情が切なく美しい歌詞に起こされて、煌めいたサウンドに包まれます。このアルバムがあることで、陰鬱な日常がちょっぴり彩られていく。
 音楽の可能性、この世界に音楽があることの理由。音楽が好きという気持ち。コロナ禍のなか、エンタメが難しくなり、「不要不急」なんて言葉に聞き慣れてしまったような乾燥した世界で、それでも音楽の価値を精力的に届けてくれる、頼もしいミュージシャン・錦戸亮が作り上げてきた渾身の作品となっています。
 すべての音楽好きな人に届いてほしい。音楽ってやっぱり良いなって改めて感じさせる、楽しくてたまらないアルバムです。
 と、どっかのレビューみたいなことを書いてみますが、もう、聴かない理由を並べ立てている間に聴こう!
 そこのあなた!このブログを読んでいる暇があったら聴こう!CDまで買えとは言いません。いや・・・買ってほしい・・・のは置いといてとりあえずサブスク入れてください。ワンタッチ!LINE返すより楽です。
 私はLINEの未読を鬼のように溜めつつ、代わりにリョ~ちゃんのアルバム、何周かしました。
リョーちゃん、私嬉しい。こんなアルバム出してくれるのがうれしくてうれしくてたまりません。
 何度もツイートしているようにリョーちゃんの好きな音楽を詰め込んだアルバムという感じで、変に大衆向けを狙っていない自由な作風で、こんなアルバムをリョーちゃんが出してくれる未来が待っているなら、あのどんより曇った日々を耐え抜いた(全く耐え抜けていなかったが)意味があるなと十分に思えるようなアルバムでした。
 リョーちゃんがいろいろあって、何回かブログを書こうとしたけど何よりリョーちゃんからの供給過多にうれしい悲鳴を上げ続けるばかりで、今度こそ、今度こそと思いながら毎回タイミングを逃していました。こういうのは先延ばしにするとなんもいいことないからな。勢い!勢い!何事も勢いが必要です。覇ッ(←変換がキモかったからそのまま残します)
 というわけで、書きます。今日が水曜日だけど、日曜日までには絶対に書き終えます。アルバム感想という名の恐らくこの数年の振り返りになるのですが、いかんせんこのアルバムはリョーちゃんのことを知らない人や、リョーちゃんから離れてしまった音楽好きな人にも聞いていただきたいので、自分語りは少々抑え目を目安にします。
 でもやっぱりファンとしての感情も自分のためにつづりたいので、とにかく音楽自体に興味を持っている、でもオタクのポエムはうざい、という方は視聴の部分までのちょっとした解説だけでも読んでみてください。
 

〇アルバム「Note」感想

1.総論

 
 私は錦戸亮の作る音楽が大好きです。グループ時代は屋台骨のように頼り甲斐がある音楽面のブレイン、エースでソングメーカーだったのですが、どれもこれも一筋縄にはいかない渋さがあるオシャレな楽曲で、そんなセンスを私はずっと信じていました。
 なんやかんやあって独立したリョーちゃん、音楽制作の意欲があることを知った私は何の心配もしてなかったのですが、独立からわずか2か月ほどで発売された前回の1stアルバム、実は結構物足りなさを感じていました。もちろん独立して一発目という意味でものすごく価値のあるアルバムだし、あのクオリティをものの2,3か月で仕上げてくるのはさすがリョーちゃんとしか言いようがなかったです。サラリーマンの日常と、言葉にするでもない平凡な落胆と平凡な奮起を「辛くないといえばウソ」「頑張れるよこれはほんと」という絶妙な歌詞に起こしてくれた「狛犬*1など、やっぱり名曲はちゃんとありました。(聴いてみて!)

 それでも粗削りで少々乱暴な構成、実力はこんなもんじゃねえだろっていう気持ちがなかったといえばウソ。ミュージシャン錦戸亮の作品として評価されると思うともう少しインパクトがほしかった。
 でもね、あのスピード業は早くオタクの前に顔出すためだったんですよね。ありがとね。
 今回は時間もあるし、リョーちゃんがわりと音楽に向き合える環境で作られたアルバムということで本当に楽しみでした。続々と解禁される曲がすべて良いのも期待値を上げていて、蓋を開けて微妙だったらどうしようという不安にも無駄に駆られましたが、結果めちゃくちゃ無駄に終わりました。
 すごい!すごいよ。みんな。とりあえず聴いてください。聴いてからこれ読んでください。
 これが私の信じたリョーニシキドです。おかえり!というのは少し変ですが、これですこれこれ、この滾る血潮と興奮!
 このめんどくさがりの私がアルバム全曲レビューするなんて前代未聞なんですよ。それだけ良いアルバムでした。
 そんな感じで一曲ずつ各論に入ります。
 
 

2.各論

(1)Topnote

 はい出た、RYONISHIKIDOといえば!なロックインスト。世間の皆さん、あのRYONISHIKIDOはインストが作れちゃうんですよ。最初にドラム、次にエレキ、ベースと音が重なっていくみんなが好きなやつ、まあ特別なことはしてないんだけど、この"みんなが好きなやつ"がちゃんと一発目に持ってこられてるあたり勝ち確です。
 一作目でも一曲目はインスト。そこは奇をてらわず王道を歩み、これ好きやろ?と言わんばかりに持ってこられた正解、好きです....とひれ伏すことしかできません。
 鋭いスネアの音と燃え滾るようなエレキ、心臓が引っ張られるベースがねりねりと一音ずつ移動していけばつられて緊張感と血圧が爆上がり、あっという間にNoteを聞く準備が整います。

Top note

Top note

  • 錦戸 亮
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  • ¥255

  

(2)Tokyoholic

 テクニシャンRYONISHIKIDOは前曲TopnoteをTokyoholicと同じEmのキーで作っているので、Topnoteからの流れは抜群のよどみなさ。
 インストでテンションがぶちあがったところで間髪入れず始まるのがこちらのTokyoholicです。知る人ぞ知るRYONISHIKIDOのグループ時代からの代表曲。東京への憧れと憎しみを軽快なカッティングに乗せてぶちまけていく痛快オシャロックです。Tokyo!のコールはライブでぶちあがる用のプレゼント。韻を踏んでいる歌詞はコテコテ関西弁なのに最高にCOOOOOLに聞こえちゃうのがリョーニシキドの手腕。セクシーでしゃがれた歌声はもちろん、途中で入る3拍子、そしてボサノバなどのジャンルも渡り歩くので、3分ちょっとしかないのにこの曲だけで錦戸亮の才能一覧という感じで自己紹介ができちゃいます。ようこそRYONISHIKIDOの世界へ。とりあえず必聴!

Tokyoholic

Tokyoholic

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 巷ではリョーちゃんがTokyoholicを歌った!と噂のようですが、実は1stライブから歌ってくれていました。許可取り済みのようですのでみなさんご安心ください。
 この曲についての想いはこちらを参照していただくとして、今回のポイントとしてはグループ時代から編曲を変えてきているところ。
  原曲の魅力はお洒落なのに、どこか泥臭さがぬぐえない、東京で必死にもがき続ける男たちのロックに聞こえる点であると思うのですが、今回のTokyoholicはRYONISHIKIDOのソロらしくよりスタイリッシュになっています。
 私は思うのですが、わざわざ前事務所にコンタクトをとって許可を取るまでしてこの曲を持ち帰り、再度編曲して演奏する労力って並大抵のものではなくないですか?
 それだけ大事にしたい、心を込めた曲をグループ時代に作っていたという事実の裏付けにもなる。何よりやっぱりうれしい。色んな思い出が詰まったこの曲が再びリョーちゃんの手で生き返るのは純粋にうれしいです。
 そして錦戸亮以外にこの曲を歌いこなせる人物は7人時代のグループ以外にいないと思います。あのときのTokyoholicも最高にかっこよかったと思ってるから、原曲をそのまま踏襲するのではなく編曲してくれたところ、優しいなあと思いました。

 私の一番好きな変更点はタンバリンをなくしているところです。
 グループ時代のTokyoholicでは当時のメインボーカルだった渋谷すばるの鳴らすタンバリンで幕を開け、ライブでもギターを抱えずにすばるはタンバリンと歌に徹します。曲中でも印象的な楽器です。
 もともと原曲は、サビをすばるとリョーちゃんのツインボーカルで構成しています。
 リョーちゃんが独立後のインタビューで唯一明確に言及したメンバーがこの渋谷すばるでした。「片割れ」と表現していたように、すばるとリョーちゃんはツインボーカルとしてグループ時代の曲をメインで担当していました。
 ビートルズの「ジョンとポール」、二人のことをそんな風に言葉にしたのもまぎれもないリョーちゃん自身で、すばるが去る際にそれまで気張っていた表情を崩して涙を流し、寂しいと呟いたのも彼でした。
 ずっと横で歌っていたすばるが鳴らしていたタンバリン、それを除くことにどのような意味が込められているかはわからないけど、リョーちゃんのすばるに対するあこがれはそのままに、ツインボーカルとしての「片割れ」から脱却するような意思が、私にはどうしても感じられました。
 
 最後、I can't hate you Tokyo!がエコーするところも、それでもやっぱり東京への執着を叫んでいるようで大好きです。


(3)キッチン

 私イチ推し、キッチンで料理をがんばる彼女を見守るスケベ男のラブソング。
 マイナー気味でクールめのイントロの効果でAメロからのラブリーな雰囲気がより引き立ちます。キュートで落ち着いた展開をしていくA、Bメロですが、やはりこの曲の真骨頂は歌詞の多いサビ。
 歌詞が多いんだけど、言葉が流れるように耳に入ってくる絶妙なメロディとエモいコード進行、明るくてキラキラしてて幸せでエッチな歌詞なのに、なぜか涙が出てくるようなまぶしいエモさをあわせもつサビは、思わず口ずさんでしまう爽快感があります。これが俗にいう甘エモロック、RYONISHIKIDOの得意技です。跳ねるように音が舞う、一度聞くと頭から離れない甘くてエモいメロディーがとにかくキャッチーなのでこちらも必聴。
 そして、この曲に限らずですが、RYONISHIKIDOのつくるベースラインはベースが好きな人がつくったとわかるベースラインです。なんというか、最低限の役割にとどまらず、主役の一人としてベースが華々しく存在しています。例にもれず、特にキッチンはベースが死ぬほどかっけえのでそこにも注目。
 ベースラインがしっかりしているので、動きのあるメロディーにバックサウンドが負けない、ただのラブソングで終わらないしっかりした格好いいロックに仕上がっています。
 とにかく何回でも聞きたい、車でかっ飛ばしながら流したい、陰鬱な月曜日の朝も背中を押してくれる一曲です。

キッチン

キッチン

  • 錦戸 亮
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 コロナ禍で行われたファンミ、一歩出ると陰鬱な空気が漂う世界から唯一隔絶されたアリーナの中で、ニコニコ穏やかな笑顔を浮かべるリョーちゃんと、多幸感に満ち溢れたこの曲を聴いて、私は泣きました。泣くはずではなかったんですけどね。


(4)ハイボール

 8分の6拍子、今カノの恋愛遍歴に思いを馳せながら奮闘するかっこつけてるけど少し情けないブルース。ピアノとエレキギターの掛け合いが心地よいです。
 エレガントなピアノのフレーズから唐突に「君が誰の元カノでも動じないでいられたら」とド直球男子な一節が飛び出すのがおもしろい。RYONISHIKIDOの甘い、色気のあるドロッとしたチョコレートのような声が大変よく合います。
 途中で入るハーモニカもまた少し頼りなさげな印象で、彼女の過去が気になるのに、強く出られない男子の翻弄されっぱなしな可愛げと郷愁が目に浮かぶように響きます。ライダースの似合うりょーちゃんらしい、男臭いブルースです。

ハイボール

ハイボール

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 サビでは「今が好き、これまでもこれからも」とそれでも力強く歌い上げるこの曲。Note感想でリョーちゃんとオタクの歌、という意見を送っていただきましたが、架空のラブソングではあるんだけど、リョーちゃんにこんなことを歌われてはオタクは気が気じゃない。いろいろあったけど、私もこれまでもこれからも今が一番だよ、と泣きながら返すしかないのです。
 リョーちゃんはこういう、フィクションの歌の中に曲の物語の続きなのか、あるいは自分自身の内情か、どちらにもとれるような渾身のフレーズを入れてくることがあります。これからどうなるか分からなかったあの状況で、これからもどうなっていくか分からない不安定な世界で、今が好き!と叫んでくれる大サビは力強い安堵をもたらしてくれます。りょーちゃんがそう言ってくれるのであれば何より。
 そこから続く歌詞は涙なしには聞けません。愛する人へ精いっぱいつづられる、不器用でまっすぐな愛の言葉。きっとこの物語の中の主人公のセリフなんだろうけど・・・。そんなあったかい曖昧さがオタクは幸せです。
 ハイボールと銘打つこの曲ですが、本人はハイボールが苦手だそう。でも麦焼酎だとなんか違うやん、だからといってマティーニはかっこつけてるやん、だからハイボール。らしいですが、メイキングで麦焼酎片手に~と歌い上げるシーンがあったけど、私はそっちも聞きたい。

 そしてリョーちゃん、ま~た新境地開拓してます。このどストレートなブルース調は今までりょーちゃんのレパートリーのなかになかったですよね?
 前作になかったのはこういう感覚なんだと思います。は~?こんなんも作れんの?みたいな感覚、これこれ! 
 ここまでアルバムの流れ自体も非常に良いです。Topnoteから一切勢いが衰えずにここまで来ます。ハードロックなインスト、おしゃロックで幕を開けて甘エモロックからのブルース。完璧!!!


(5)コノ世界二サヨウナラ

 ゆったりと厳かに流れるスローバラード、「君」がこの世界とさよならをする曲。ここでこうくるかRYONISHIKIDO、と思わず唸りたくなる方向転換。
AppleMusicのレビューにはアルバムを通して出会いと別れがテーマになっているとありますが、「別れ」を代表するのはこの曲。
 淡々としていて派手ではないのですが、重々しいサウンドと憂いを帯びた歌詞、そして錦戸亮の悲痛な歌声がマッチして凄まじい世界観を作り上げています。別れの曲だけあってマイナー調ですが、なんとなく希望や救済を思わせるようなたおやかさも魅力的。
 一番はスネアのロールと忠実に4拍子を刻むアコギのみで構成されています。その神聖な静寂は葬送曲を連想させ、孤独に丁寧に紡がれる歌詞と相まって、誰もいない森の片隅のような息を呑む静謐さがとにかく凄い。
 2番からはベースとエレキギターが入り、ドラムも通常の8ビートに変わります。りょーちゃんの歌い方も荒くなり、雰囲気がガラッと泥臭くなります。この曲は別れの曲であるにも関わらず「涙」とか「泣く」という言葉は出てきません。代わりに間奏で鳴り響くギターソロが涙の役割です。これぞ泣きのギター。ぐしゃぐしゃに泣くギターに心がかき乱されます。
 心にぽっかり穴が空いて空虚で、泣きたくて苦しい、それでも世界は回っていく、壮絶でどこか淡々とした、美しい別れの歌です。

コノ世界ニサヨウナラ

コノ世界ニサヨウナラ

  • 錦戸 亮
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 特にメロディ回しが秀逸であるように感じました。コードと歌詞を最大限に活かすメロディがひたすらに美しく流れます。
 初めて聞いたのは武道館ライブの時だったのですが、その時の照明も神々しいというか、いくつもの光の線がまっすぐ天まで伸びて国旗の周りを照らし、荘厳な雰囲気の中で歌われていました。
 アコギ一本で歌われたその当時は、りょーちゃんの周りからいなくなった人、またこの世から失われた人たちのことを思いました。
 歌詞は一応ラブソングの体を成しているのですが、恋人との別れとは到底思えない、避けられなかった今生の別れーー死を思わせる胸を引き裂く哀しさとがありました。
 一方、バンドが入った今回のアルバムアレンジは、アコギ一本の時とは全く違うような別物の雰囲気を帯びています。
どんよりした重いサウンドと締め付けるような歌詞は、美しさは変わらず、しかしソロの時のような死の安寧はなく、生きているからこその生々しい別れの苦悩が感じられます。
 私はこのバンド版で、個人的に本当に苦しかった2018年〜2019年を思わずにはいられませんでした。

いつかいなくなる事
分かってるけど分かってたけど
いつかいなくなる事
片隅にずっと置くべきなの
いつかいなくなる事
誰かが教えてくれることもなく
君から教わっていくんだろう 

 りょーちゃんの記事が出た3月から9月まで、生きた心地がしませんでした。
 でもあの記事が出た時点で、もっというとすばるの会見の時、泣き腫らしたような重たい瞼で門出だと言ったりょーちゃんを見た時から、きっと心のどこかで次はりょーちゃんだって分かってたこと、この歌詞を聴いて改めて気づきました。
 実際のりょーちゃんは2018年の夏を必死に駆け抜けて、強がりな言葉をブログに綴って、ライブでもよく喋って私の悲しみを蹴散らしてくれましたよ。泣くオタクたちを見て笑え!!と怒鳴ってくれたりょーちゃんの引っ張るグループを見て、もう大丈夫だと心から信じて、また夢を見るのもいいかもなと思ったのは大切にしなければならない事実です。
 2019年も、りょーちゃん自身は全くそんな素振り見せずに、バラエティもライブもいつも通りを貫いていました。どこかで分かっているのに、どこかで夢を見るような状態が長く続いて、不穏な記事やツイートが無責任な言葉を投げるなかでりょーちゃんはずっとりょーちゃんでした。
 りょーちゃんの言葉で脱退、退所と見て初めて実感が湧いて、ものすごく辛かったけど、生殺しのような日々から私とリョーちゃんが解放された安堵があったことも嘘ではなかったな、と思います。
 そうやって世界は回っていくんだろう、とあるように、何が起こっても世界は時間を刻みますよね。すばるがいなくなった時と同じように、私は絶望に暮れているのにやっぱり世の中は知らない顔で平気に回っていきました。ニュースを知った夜から泣き続けて友達と電話で語り明かして朝がきて、それでも朝は来るんだね、と、一年振り二回目の話をしました。
 それから1ヶ月、表舞台の人ではなくなったりょーちゃんに、今何してるかな、美味しいもの食べてるかな、友達と笑って穏やかに過ごしてほしいなあ、なんて想いを馳せました。オーラスの景色綺麗に思ってくれたかな、とか、たくさん曲を作ってくれたな、きっとまだ出してない曲の入ったPCや、今までライブや番組で使ってた楽器のある部屋に帰るりょーちゃんはどんな気持ちでいるんだろうとか。
 『君がこの世界とサヨナラする日 思い出すのはどんな夜かな』まさにそんな私の心情そのままの歌詞は、あの日々の私を見るようでした。もしかするとりょーちゃんも、あの夏はこういう気持ちだったのでしょうか。

 それでもこうして、想いを馳せた本人の曲を聞けている今があります。
 のちに触れるラストノートに出てくる「終わりとセットじゃない始まりなんてあんのかな」という歌詞がありますが、逆も言えるかなと思います。
 長い時間をかけて一時代が終わっていきましたが、今思えばあの「終わり」はある種の始まりでした。始まりがあれば終わるけど、終われば始まりがある。この曲に感じる「救い」の部分は、今私がこうやってりょーちゃんの曲を聞けている、すばるも5人も元気そうにやっている未来が待っていたからこそ、りょーちゃんが新しい始まりを見せてくれたからこそ、心に染み渡っているのかもしれません。

 私が青春をすごしたあの世界とはさよならしたけど、新しい世界へ連れて行ってくれたリョーちゃんを、改めて大好きだなあと思えた曲です。


(6)オモイデドロボー

 既存曲以外で最古参、おととしの12月にリョーちゃんからクリスマスプレゼントです、と言ってライブで歌ってくれた曲。
 主人公を泥棒に見立て、君の思い出を盗んで上書きする、そんなとってもロマンチックなポップスとなっています。
 重厚だったコノ世界ニサヨウナラからまた一転、ガラッと雰囲気が変わります。入念に計算されているアルバム曲順。唸ります。オタクは最も聞きなれている曲なので、ここで一度元の場所に帰ってくるような安心感を覚えることができますが、耳なじみの良い曲なのできっと聞く人みんなそんな感じじゃないかな?これが次曲への小休憩になっている感じですね。
 ずっと前に書き溜めていた曲のようで、1stに収録する曲の候補に出さなかったことを割とすごい勢いで怒られたというエピソードがあるほど、完成度が高いです。今回の曲では一番商業的というか、誰にでも受け入れられるような感じ。
 ピアノの音色が心地よく、クリスマスの浮き立った街並みを連想させます。

オモイデドロボー

オモイデドロボー

  • 錦戸 亮
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 私が一番好きな歌詞は「喧嘩しちゃった記念日も」ですね。めちゃくちゃかわいくないですか?あの、誰もがとろける世界のRYONISHIKIDOから「喧嘩しちゃった記念日」なんて言葉が飛び出て心臓も飛び出ました。かわいすぎる・・・。
 私はこれが披露された1stライブのオーラスに入ってましたが、音響の影響でほとんど歌詞が聞き取れず、この言葉だけ聞き取ってうそでしょマジかよリョーニシキド・・・となったのを覚えてます。
 また、「過去に縛られてるのは誰?君じゃないな」もさりげなく核心をついていてさすがだと思います。結局なんやかんや言いつつ過去の思い出を反芻してるのって自分なんですよね。うんうん。


(7)Middle note

 これが鬼才の仕業。なんとも形容しがたいオルタナティブなインスト。
 これはもう聞くに限ります。聴いて?
 私、アルバムでこれが一番の驚きでした。こんな能力隠し持ってたなんて聞いてねー!
 不協和音チックなピアノのリフがきらめき、ボーカルチョップや打ち込みの色んな音が暴れまわりカオスな世界観ですが、Middle noteのタイトルどおり、時間の経過とともに移り変わっていく香水の香りように凛とした芯があります。
 間奏(?)というんでしょうか。途中の変拍子のところはマジでどうなってんだ?解説不能です。とにかくすごいことをしてることしかわかりません。
 変拍子が終わるとサックスの音色が響くジャズ風味のアレンジとなります。前半のピアノリフはそのままに、今度はサックスが音の海を泳ぎます。
 これはリョーちゃんが最近好きだと言ってるFKJというアーティストのオマージュでしょう。FKJもジャンル分け不能なセンス抜群の音楽(ニュー・フレンチ・ハウスというそうです)ですが、電子音のなかに唐突にサックスが鳴り響くところとかそっくりですね。

Middle note

Middle note

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 私、FKJのようなエレクトロニックなわけわかんないけどメロウなサウンドが大好物なのですが、まさかリョーちゃんがこれに手を出してくれるとは・・・・・・・・。感激で胸がいっぱいです。これが好きと言ってくれたこと自体最高だったのに、自分で作ってくれちゃうなんて聞いてません。いっぱい研究したんだろうなあ、好きなものを自分もやってみたい!!という少年心(やってることはエグいが)が感じられてよかったです。私もFKJ好きだけど作ってみようなんてさらさら思えないから、やっぱりリョーニシキドに不可能はありません。
 今回のMiddle noteは見よう見まねというか、オマージュ感がかなり強めですが、これからサウンドづくりに慣れていってリョーちゃんのオリジナリティが出てくることに期待大です。リョーちゃんの手にかかればエモくてチルアウトなアダルト風味の音楽になりそう。
 まさかすぎる新境地。私はいずれリョーニシキドにこれ系のインストアルバムを出してほしいですね。


(8)微睡み

 「私」がもういない人を想うピアノ主体のバラードです。おそらく女性目線のこの曲は、恋心の執着をびっちゃびちゃに、かつ爽快に歌い上げます。こういう湿っぽい曲はRYONISHIKIDOの専門分野です。専門家による珠玉の一曲。
 Aメロはピアノとハイハットのスウィングで進行し、リョーニシキドの掠れたような泣き笑いの声が胸を震わせます。
 特徴のある女性の声で歌われているのが容易に想像つく、最近流行ってそうなモダンな曲調でもあるように感じました。
 サビは会いたかったんだな、泣きたかったんだな、そんな言葉通り、涙が溢れ出るようなストリングス展開でドラマ性が一気に加速します。意外や意外、RYONISHIKIDOは自分の曲のアレンジでストリングスを嗜む男。隙さえあればストリングスを多用します。
 極めつけは各サビのラストフレーズ、あなた以外で「試してもみたけど」が3連符となっているところですね。ここで情緒が最高潮に震えます。正直それまではただただ聴きやすいバラード、という感じなのですが、最後そう締め括るか....って感じで頭抱えました。この3連符で完結することで、この曲で記された未練や寂しさにグッと説得力が出るのです。いや、さすがすぎ。分かる。ここはそれで終わるのが最適解。タダじゃ帰してくれないリョーニシキド。これがモテる男の実力です。

微睡み

微睡み

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 泣きたかったんだな、寂しかったんだな、で思わずあの夜を思い出してしまうのはオタクの性。でも生きてたらきっとそういうときってありますよね。恋愛でも仕事でも、そのときは何でもないように振舞ってたし、振舞わないといけないと誰に対してでもなく意地を張って、あるときふと、ああ私やっぱりこうだったんだ、って気づくこと。
 でも意地を張りたいときには張ってもいいし、現実を見たくない時もあるよな、とも思います。
そうやって、自分に対して少し嘘をつきたいときに聞いてしまうと、せっかく積み上げた虚勢が壊れて涙がポロポロ溢れてきそうな優しくてグッとくるバラードです。
 あの夜、泣きたかった、寂しかった、って気づけたのもリョーニシキドのおかげでした。


(9)Silence

 夏に行われたファンミで卸された、こちらもピアノが印象的なバラード。微睡みからの同系統の流れが心地よいです。
 コロナ禍の影響で作られた一作。マスクをして、エンタメの停滞を余儀なくされた静まり返った世界にそれでも音楽が響き渡ってほしい、そんな祈りがこめられています。
 誰も声が出せない静まり返った客席に響き渡った「とても静かだな、誰もいないみたいだ」という歌声、あれはあれで美しい瞬間だったと今思います。
 未知のウイルスが流行り、エンタメが自粛された世界で響く心のこもった優しいバラードは、この世界にそれでも音楽がある、音楽がなければならない意味を教えてくれるようです。

Silence

Silence

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 音楽を愛するリョーちゃんが好き。
 詳しくは後編の特典編で記載するつもりですが、わりとふさぎ込んでいたあの時期に、生で音楽を届けてくれたこと、ずっと忘れたくないなと思います。


(10)若葉

 どこかノスタルジックな、上京当時の自分を歌ったという爽快なロック。リョーちゃんにしては珍しく、曲について背景の明示がありました。一人暮らしをする人ならだれでも共感できる、あの新生活の始まり特有の胸の高まりを描いています。
 何もないけど希望がある。
 Tokyoholicで東京で戦う苦労を描きつつ、若葉で東京へ抱いていた夢と希望を描くのに、アルバムを活かした物語性を感じずにはいられません。そして、若葉が後なのも渋いですよね。東京は憎い、好きになれない、それでも捨てられない場所、そんなメッセージを感じる曲順です。
 ちょっとスピッツ風味なんですかね。リョーちゃんスピッツも好きって言ってた気がするのですが、イントロのエレキギターの音色とか特にそんな感じの郷愁を帯びています。

若葉

若葉

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 若いころって物足りないくらいがちょうどよくて、不思議とそれが一番楽しかったんですよね。
一番では「空っぽのトランク」だったのが、最後では「傷つけたトランク」に変わり、「姿変え続ける夢」と続きます。若くて楽しかったころを思い返して美談にして終わらせないのがリョーニシキド。あの頃のように無邪気にはいられないけど、いつまでも自分の信じるものを大事にして進み続けたいと思える、希望の曲です。


(11)スケアクロウ(通常版のみ)

 錦戸亮がグループ時代にソロで歌った名曲。こちらもTokyoholicと同様、1stから持ち帰って歌い続けてくれています。
 アコギの良さが染み渡る8分の6拍子。ハイボールや前作収録の狛犬のように、錦戸亮の作る8分の6は良曲だらけですね。
 スケアクロウ、つまりかかしのように風でも雨でも変わらずに何かを守り抜く強さを歌いあげます。
 スケアクロウ、正直大好きすぎて良さを語りつくせる自信がないので解説は割愛。
 私は歌詞というより音楽が本当に大好き。アコギがここまで響く曲もなかなかないと思うほど、曲全体を通して規則正しいストロークの音が優しく包み込みます。アコギって繊細なんだけど武骨で、優しいんだけど力強い、華々しくはないけど愛着の湧くとても魅力的な楽器ですよね。アコギが似合うリョーちゃんが作る曲らしい。
 初めて聞いたのははるか昔ですが、少し老いた声の再録版は、また味わい深い、全く色あせない良さがあります。
 今のところリョーちゃんの全ライブのセトリに組み込まれているので恐らくリョーちゃんも好きなのでしょう。

 独立してたった一か月で私はリョーちゃんに会うことができたのですが、リョーちゃんがその時に、「アルバムも発売してないのにツアーやってすみません、初めて聞く曲ばかりで盛り上がりにくいですよね。でも、はやくみなさんに顔見せるためにはこれしかなかったんです。」と言ってました。
 『君が迷わないように 見つけやすいように 君を一人にさせないように 僕がここに』その歌詞がまた全く違う意味を持って聞こえて私泣きましたね。
 どんな時代になってもどんな状況になっても、作った時とは何もかもが変わっても、音楽はおろか歌詞だって全く色あせない。名曲とはこういう曲のことを言うのですね。

 自分語りをしますが、高校時代、グループ時代のライブでアコギ一本でセンステに立って、スケアクロウを演奏したリョーちゃんを見てアコギを衝動買いしました。来る日も来る日もレコーディングのメイキングを見てはコードの指の形を覚え、初めて演奏できるようになったのもこの曲です。人をアコギへ駆り立てる魅力と思い出が詰まったきれいで大好きな曲。
 私はそのライブに行ってないので、リョーちゃんが独立するまでスケアクロウを生で聞いたことがありませんでした。まさか一人になったりょうちゃんの声で生で聞ける日がくるなんて、アコギ一本の弾き語りを聞けたり、CDに再録されたりする日が来るなんて人生何が起こるかわかりません。
 でも、今後も人生に何かが起こってもやっぱりこの曲はずっと名曲で、私はずっと大好きなんだろうなと思います。 
 

(12)I don't understand

 アコースティックギターの音が彩るセピア色のフォークソングです。Aメロ、サビ、間奏のみで構成されているシンプルな曲ながら、Aメロからサビの思い切った転調はなかなか斬新。サビの展開はビートルズの風味があり、耳なじみがよくノスタルジックなメロディに錦戸亮の掠れた飾らない歌声が心地よいです。
 間奏で切なく紡がれるソロギターが隠れた主役。ずっと聴いていたい心地の良さ、少ない音数にもかかわらずRYONISHIKIDOのエモーショナルな世界観がこれでもかというほど幅を利かせる逸品です。

I don’t understand

I don’t understand

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 これを聴くと、リョーちゃんにとって、今までに起こった出来事はきっと悪いものではなかったんだろうな、という思いでいっぱいになります。
 あの場所との別れの曲なのでしょうか。私にはそう聞こえます。リョーちゃんはもうあの場所のことを全く口にしないですが、悪い思いは一切描かれてなくて、ただただ青春のツンとした切なさと美しさが漂っているのです。
 賑やかな時間、満たされすぎて。きっとそうだったんだろうな、という素直な感情が穏やかなアコギに乗って響きます。
 いろんな意見を山のように見てきました。良い思いも悪い思いも。間違いだとは思わないのですが、彼があの場所を心から愛していたことは紛れもない事実だと言い切りたい。私が見てきた大切な思い出の宝物を裏付けしてくれるような愛しい言葉たち。
 『悲しむ余裕などなかったあの頃、立ち止まる勇気に気付かされたこの頃。』全部鮮明に、自分のことのように想像することができます。
 サビは英詞で、大事な部分で名言を避けるのもニクいな、と思いました。解釈は聞き手にゆだねる。リョーちゃん自身にもきっとしっかりした思いがある。
 I don't understand.タイトルにもなっているこのフレーズ、いろんな訳ができると思いますが、私は「もうこれ以上気付きたくない」みたいな意味なのかなあ、なんて思いました。
 この場所は満たされすぎて明日が見えなくなるから、早く旅立たなければならないけど、そんなこと気付きたくなかった。
 「永遠」にこだわっていたリョーちゃんは、すべてが一変してしまったときに永遠なんてない、はっきりそう言える。信じたかったけど。というニュアンスの言葉を書き残しています。
 永遠などないことに気付いてしまったリョーちゃんが、それでもWe stay forever young.俺たちはずっとあの頃のまま、と安らかに歌うことができるなら、これ以上によいことはないです。永遠がなくても、永遠を願ったその瞬間があることは永遠だと思えます。誰もが永遠を信じた頃があったということを抱えて宝箱にしまいたい。
 この曲だけは、"あの頃"が好きだったオタクたちに聞いてほしいです。リョーちゃんはこんな風に歌っていること、みんなに知ってほしいなと思います。
なんて言って、これも全くのフィクションかもしれないのですけどね。


(13)ラストノート

 オタクたちの反応を見る限り一番人気の曲です。シンセサイザーが光るロックテイストで、一昔前風の懐かしい賑やかな曲調。
 ラストノートとは残り香の意。すでに隣にはいない、ホワイトリリーが香る愛しい人へのきらめいたラブソングですが、なんだか泣きたくなるような切なさも詰まっています。キッチンで前述した甘エモロック、ここにきてもう一度花咲きます。明るいイントロとは裏腹に、マイナーめのサビが捨てきれない未練を思わせるような寂しげな雰囲気もあり、それでいてクールでかっこいいです。
 そもそもラストノートはインストだと思い込んでたし、Silence,スケアクロウ、I don't understand ときてこのまましっとり終わるのかなと思いきや大どんでん返し、そうこなくっちゃリョーニシキド!アルバムのラストを飾るのにふさわしい華々しい曲です。
 こうしてみると、今回のアルバムでリョーニシキドの曲で彼女とうまくいってるのってキッチンくらい?いつも失恋してる印象があります。

ラストノート

ラストノート

  • 錦戸 亮
  • J-Pop
  • ¥255

 
 『終わりとセットじゃない始まりなんてあるのかな』ここでもリョーちゃん特有の永遠感が語られますが、それでも、『答えは知らなくていい、逃げろ!さあ意気地なし』と続くのです。私はこの部分が本当に大好き。終わるかもしれないけど、誰もそんなことわからないから、ただの逃げと思われようが進むしかないんですよね。I don't understand.と通ずる部分もありつつ、とにかく進め、と強引に引っ張ってくれるようなフレーズです。
 こんなにキラキラして、こんなにエモい曲で爽快にアルバムを締めてくれるエンターテイナーRYONISHIKIDO。曲が終わっても、キラキラして楽しくて、楽しすぎてどこか泣きたくなるような感情。  
 ラストノート、その名にふさわしい残り香的な余韻がずっと心に残ります。


3.まとめ

 全13曲、オタク特有の早口で感想を述べてきましたが、こうして並べてもやっぱり特筆すべきはそのバラエティーに富んだジャンルの数々!ロック、ポップス、バラード、ジャズやブルース、フォーク、果てはMiddle noteのような実験的な一曲まであります。ところどころ好きなものに対する影響やリスペクトを感じさせながら、それでもリョーちゃん自身の曲へとしっかり昇華されている点もうれしい。
 そして一曲一曲が精巧に作られていて、1作目に感じた時間のなさなど微塵も感じさせない丁寧なサウンドメイキングも素晴らしいと思います。端的にいえば捨て曲がない。RYONISHIKIDOがじっくり作りこめばここまでのものができるんですね。リョーちゃんの音楽的センスを信じた私は間違ってなかった、とは言い切れますが、それでも私舐めてましたごめんなさいと土下座できるくらいに、期待の10倍以上の出来でした。
 今好きな音楽を詰め込んだ、いい意味でジャンルやテーマにはなんの統一感もない挑戦的なアルバム。アルバムは変にテーマを設けるより、これくらいごちゃついてた方が楽しくて良いです。出会いと別れがテーマ、と一説にありますが、リョーニシキド自身が出会いと別れにまみれているのでそうなるのは当然、実質テーマはありません。ただどの曲も、リョーニシキド特有の尊い強さと優しさを携えています。
 そんな曲群をNote、香水の移り香に例えながら、一点の一貫性を持たせてしっかりした作品に仕上げてきたRYONISHIKIDOのプロデュース力には本当に脱帽。36歳、ある程度キャリアも積んで自分の色もはっきりしてきて平行線をたどりがちな年齢で、ここまで新しい世界を展開する余力があること、またそれを見せてくれることが私はね、本当に、ほんと~~~~~に嬉しかったです。
 こんなにたくさんのジャンルを使いこなすこと、相当な勉強と努力を要しただろうと思います。そこを惜しまなかったこと、嬉しかった。
 グループ時代、良いアルバムが出るたび、次はどんなアルバムが出るのかな、とワクワクしていたあの感情、またこんなに新鮮に味わわせてもらえるなんて、生きてればいいことあるんだな。
 普段あまり語ることをしないリョーちゃん、音楽で雄弁になるのが大好き。リョーちゃんが依然、「バンドは嘘をつけない」という言葉を残しています。大好きで、何があってもずっとずっと反芻している大切な言葉です。
 まだまだこんなものじゃない、一作目とはまた違った意味でそう言えるアルバムを出してくれるリョーちゃんに感謝。
 リョーちゃんの音楽に救われてます。本当にいつもありがとう。
 さすが俺たちのリョーニシキド!
 これからも楽しみにしています!

 ここまで読んでいただいたみなさん、何をしているのですか?早くスマホをいじる親指を音楽アプリへ動かしてください。
 ぜひ聴いてね!!!!

 https://music.apple.com/jp/album/note/1545365239

 PS.二日で書き終えました。勢いって大事!

*1:

狛犬

狛犬

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